化粧品ビジネスに必要な2つの許可(製造販売業・製造業)
化粧品起業に必要な許可と薬機法の基礎知識
化粧品ビジネスに関わる許可は主に2種類、「化粧品製造販売業許可」と「化粧品製造業許可」です。どちらが必要かは、自社が製品の最終責任を負う立場になるかどうかで決まります。
化粧品製造販売業許可|市場に出す最終責任者の許可
製造販売業許可は、製品を市場に出荷する最終責任者に必要な許可です。都道府県知事による許可で、営業所ごとに取得します。品質管理の基準であるGQPと、製造販売後の安全管理基準であるGVPに適合した体制を整えていることが要件となります。
申請手数料は自治体によって異なり、東京都の場合は57,400円が目安です。書類の作成や体制整備に不安がある場合は行政書士に代行を依頼する選択肢もあり、その際の報酬相場はおおむね14万〜24万円程度とされています。
申請から許可までは、書類の補正状況にもよりますが1〜2か月程度を見込んでおくと安全です。許可には有効期間があり、期限前の更新手続きが必要になります。
化粧品製造業許可|つくる・詰める・貼る行為の許可
製造業許可は、実際に製造行為を行う施設に必要な許可です。区分は大きく2つあり、バルクの製造から充填まで行う「一般区分」と、包装・表示・保管のみを行う「包装等区分」に分かれます。
輸入品にラベルを貼る、バルクを仕入れて自社で容器に充填する、といった行為はいずれも製造にあたります。「自分で作らないから許可は不要」と自己判断せず、行為ベースで確認してください。
| 項目 | 化粧品製造販売業許可 | 化粧品製造業許可 |
|---|---|---|
| 誰に必要か | 製品を市場へ出荷する責任者 | 製造・充填・包装・表示・保管を行う施設 |
| 単位 | 営業所ごと | 製造所ごと |
| 主な要件 | GQP・GVP体制、三役の設置 | 責任技術者の設置、構造設備基準への適合 |
| 区分 | 区分なし | 一般/包装・表示・保管 |
| 手数料 | 自治体により異なる(東京都は57,400円) | 区分・自治体により別途必要 |
| OEM活用時 | 委託先が保有していれば自社は不要 | 委託先が保有していれば自社は不要 |
三役(責任者)の設置要件
製造販売業許可を自社で取得する場合、「総括製造販売責任者」「品質保証責任者」「安全管理責任者」の3名(要件を満たせば兼任可)を置く必要があります。総括製造販売責任者には、薬剤師であることや、化学・薬学に関する専門課程の修了、一定年数の実務経験など、資格要件が定められています。
この人材要件が、個人での許可取得における最大の壁です。要件を満たす人材を採用・確保できない場合は、無理に自社取得を目指さず、OEMメーカーを製造販売元とするスキームを選ぶほうが合理的です。
許可なしで始められる「販売元」スキーム
OEMメーカーが製造販売元となり、自社はブランドオーナーとして「販売元(発売元)」表記になる形であれば、特別な許可を取得せずにオリジナル化粧品を展開できます。品目ごとの製造販売届出も、製造販売元であるOEMメーカーが行います。
ただしこの場合でも、広告表現の責任からは逃れられません。景品表示法の優良誤認や、薬機法の広告規制は販売する側にも及びます。また、通信販売を行うなら特定商取引法に基づく表記も必須です。
押さえておきたい基本用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| OEM | 委託者のブランドで製品を製造すること、またはその受託製造メーカー |
| 薬機法 | 医薬品や化粧品等の品質・有効性・安全性の確保を目的に、製造・販売・広告を規制する法律 |
| バルク | 容器に充填される前の化粧品の中身(液体やクリームなど) |
| GQP | 化粧品の品質管理の基準。製造販売業許可取得の要件となる |
| GVP | 化粧品の製造販売後安全管理の基準。製造販売業許可取得の要件となる |
広告表現のルールと言い換えの実務
薬機法により、化粧品で医学的な効能効果を謳うことは禁止されています。「ニキビを治す」「シミが消える」といった表現は、たとえ実感として事実であっても使用できません。
化粧品として標榜できる効能効果の範囲はあらかじめ定められており、その枠内で、かつ誤認を与えない形で表現する必要があります。以下は考え方の例です。
| 避けたい表現 | 表現の方向性 |
|---|---|
| ニキビが治る/炎症を抑える | 肌を清潔に保つ、肌荒れを防ぐ(該当する効能の範囲で) |
| シミが消える/美白効果 | メーキャップ効果により明るく見せる、うるおいを与える |
| 細胞が再生する/若返る | 肌にハリ感を与える印象、乾燥による小じわを目立たなくする(試験条件下の表示ルールに従う) |
| アトピーに効く | 医薬品的効能のため使用不可 |
| 効果には個人差がありません | 効果保証にあたるため使用不可 |
化粧品 起業に関するよくある質問(FAQ)
個人でも化粧品ブランドを立ち上げられますか?
可能です。OEMメーカーを「製造販売元」とする契約であれば、個人は特別な許可を取得することなく「販売元(発売元)」としてオリジナルブランドを展開できます。品目ごとの届出も製造販売元が行います。
ただし許可が不要になるのは製造販売の責任部分のみで、広告表現や通信販売に関する法令は個人にも適用されます。表示や訴求内容の管理は自社の責任として残る点を理解しておきましょう。
手作り化粧品をフリマアプリで販売できますか?
できません。業として化粧品を製造・販売するには許可が必要であり、無許可での製造・販売は薬機法違反となります。手作り石けんや自家製化粧水も化粧品に該当し得るため、規模の大小にかかわらず対象です。
「原料」や「雑貨」として販売する形をとっても、肌への使用を想起させる説明を添えれば化粧品としての販売とみなされる可能性があります。趣味の範囲と事業の境界は自己判断せず、所管の窓口に確認してください。
どのような化粧品でも自由に広告して良いですか?
いいえ。薬機法により表現が制限されており、医薬品的な効能効果(治る、再生する、症状が改善するなど)を謳うことは禁止されています。化粧品として標榜できる効能効果の範囲内で表現する必要があります。
加えて、効果を保証する表現や、根拠のない比較優位を示す表現は景品表示法の観点からも問題になります。ビフォーアフター画像の使い方、体験談の引用方法にも一定のルールがあるため、公開前のチェック体制を用意しておくことをおすすめします。
OEMの最小ロットはいくつですか?
メーカーによって異なりますが、近年は100個〜300個程度の極小ロットに対応する企業も増えています。まずは少量で市場の反応を見たいという需要に応える形です。
ただし、ロットが小さいほど1個あたりの単価は高くなります。極小ロットは「テストのための投資」と位置づけ、反応が確認できた段階で量産ロットに切り替えて原価を下げる二段構えが現実的です。
開発から販売までどれくらいの期間がかかりますか?
OEMを利用する場合、コンセプト決定から処方開発、試作、パッケージ作成、納品までで概ね半年〜1年程度が目安です。既存処方をベースにするか、フルオーダーで開発するかで大きく変わります。
期間が延びる主な要因は、試作のやり直しとパッケージデザインの確定遅れです。試作の評価基準を事前に決めておくこと、法定表示の項目をデザイン着手前に共有しておくことで、スケジュールの膨張をかなり抑えられます。
個人事業主で始めるべきか、最初から法人化すべきですか?
小さくテストする段階では個人事業主でも問題ありませんが、自社で化粧品製造販売業許可を取得する予定がある場合は注意が必要です。個人として取得した許可は法人成りの際に引き継げず、法人として再申請することになるためです。
卸先の開拓や融資の利用を早期に想定しているなら、最初から法人で進めるほうがスムーズです。逆に、OEMを製造販売元とする販売元スキームでスタートするなら、売上規模を見ながら法人化を判断する進め方でも支障は少ないでしょう。
化粧品と医薬部外品(薬用化粧品)はどちらで作るべきですか?
訴求したい内容によります。医薬部外品は有効成分による一定の効能を表示できる一方、承認申請が必要で、期間もコストも化粧品より大きくなります。
立ち上げ初期は化粧品として開発し、ブランドが軌道に乗ってから医薬部外品のラインを検討する流れが取り組みやすい進め方です。OEMメーカーによって医薬部外品への対応可否が分かれるため、将来的に検討するなら選定時に確認しておきましょう。
化粧品起業に資格は必要ですか?
販売元として展開する場合、特定の資格は必要ありません。一方、自社で製造販売業許可を取得する場合は、総括製造販売責任者などの三役に一定の要件(薬剤師資格、化学・薬学系の専門課程修了、実務経験など)が求められます。
美容系の民間資格は、必須ではないものの、コンセプト設計や顧客への説明において信頼性を補強する材料になります。優先順位としては、資格取得よりも薬機法と表示ルールの理解を先に固めるほうが実務上の効果は大きいでしょう。